不吉?それとも幸運?目の前で黒猫が横切ったので縁起について調べてみる。
2016/02/02
黒猫が横切った
先日、車を運転していたら猫が飛び出してきました。突然のことでヒヤッとしましたが、同じくらい驚いたのが黒猫だったこと。黒猫が目の前を横切るのは縁起が良くないと聞いたことがあるので少しのあいだ気になっていました。
幸いその後は何も起こらなかったのですが、あらためて考え直してみると不思議です。どうして黒猫だけこの様な扱いなのでしょうか?黒色の犬だっていますし、黒猫自体も珍しい毛色ではありません。それなのにこれほど不吉扱いされる理由が気になりました。
黒猫は人にとって特別な存在
結論から言うと 黒猫が不吉という言い伝えは欧米から伝わったようです。
むしろ日本では昔から黒猫は魔除けや厄除けの力があるとされていました。加えていうなら、欧米でも地域によって見方がまったく違います。
いづれにしろ黒猫に特別な力があるという伝承は地域や文化が違っても共通しているようです。
幸運のシンボルの黒猫
エジプト
最初に猫をペットにしたのはエジプトといわれています。古代エジプトでは「バステト神」という猫の頭をした女神が崇拝されていました。像や絵画をみるとバステト神の多くが黒猫の頭をしています。
そのためエジプト人は黒猫を神聖な生き物であるとして、家で黒猫を飼うとバステト神の恩恵が得られると考えていました。
日本
日本にも黒猫を縁起の良いものとする習慣があります。
京都にある檀王法林寺(だんのうほうりんじ)は盗難火災から守る『主夜神(しゅやじん)さま』を祭っています。
いつの頃からかその主夜神さまのお使いが黒猫だといわれはじめました。江戸時代になると主夜神さまの名前が刻まれた黒い招き猫が作られて「厄除け人形」として親しまれていったそうです。
現代でも「白猫は福を招き、黒猫は客を招く」と言われ、黒い招き猫は商売をする人に人気があります。ちなみに黒猫は烏猫(からすねこ)と呼ばれることもありました。カラスも現代では不吉なイメージが強いですが、古くから日本では神の使いとして崇められています。
photo by kaoruokumura
スコットランド
スコットランドでは妖精が黒猫にの姿に変身しているという伝承があります。見知らぬ黒猫が通りかかった家には繁栄がもたらされるとのこと。
またケルト神話には「ケット・シー」という猫の妖精が登場します。
ケット・シーは大きな黒猫の姿をしていて、埋葬前の死者の魂を盗むという厄介な一面がある一方で、ハロウィンの時、ケット・シーのためにミルクを入れた皿を置いておくと幸運に恵まれるという良い面もっています。
南フランス
南フランスにも招き猫というか、座敷童のような黒猫の言い伝えがあります。
『マンドラゴット』または『マタゴット』と呼ばれるその黒猫は、大切に飼われると飼い主に富と健康をもたらすそうです。
イギリス
イギリスでは黒猫が目の前を横切るのはむしろ幸運のしるしだと言われています。
ちなみにイギリスの子供たちの間では白猫が横切った時は何かトラブルが起こると信じられていて、トラブルを避けるためには「唾をはく」「反対方向を向く」「十字を切る」しなければいけないそうです。
僕も小学生の頃「黒猫を見たら10歩後ずさりすること」ということが仲間内での決まりでした。こうゆう点は国が違えど似ていますね。
不吉のシンボルの黒猫
アメリカ
イギリスとは逆に、アメリカでは黒猫が横切ると不幸が、白猫が横切ると幸運がもたらされるといわれています。
中世の魔女狩りと黒猫
「魔女狩り」は黒猫が不吉とみなされる歴史の中で有名な出来事です。
昔からヨーロッパの人々はローマ神話に登場する神々を信仰してきました。なかでも「豊穣の女神」であるダイアナ神は農民たちに広く親しまれたといいます。月や多産の神でもあったダイアナ神を礼賛する集いは魔女のイメージの原型となりました。
16世紀になると伝承を信仰していると疑われた人が「魔女」と言われるようになり、「人を惑わす悪しき者」として拷問や私刑にかけられました。疑われる人は主に貧しくて孤独な老婦人が多かったそうです。そうゆう人たちは猫を飼っていることが多く、魔女の使い魔とみなされた猫(特に黒猫)も大量に処分されたといいます。
黒猫の歩き方で吉凶を占う
ドイツ
ドイツでは黒猫が右から左へ横切るのは悪い予兆とのこと。しかし左から右へ横切る場合は幸運が舞い込んでくるのだそうです。
イギリス
イギリスでは黒猫が寄ってくる場合は幸運をもたらすといいます。しかし黒猫が離れて歩く場合は幸運が離れていってしまうといいます。
海賊
海賊たちの考え方は前項のイギリスと真逆です。黒猫が近づくとよくないことが起こると考えていました。しかも船の上など歩いていた時などは、その船は次の航海で沈むといわれていました。船乗りにとっては気が気じゃありませんね。
photo by jenny downing
黒猫はペットで人気
多くの言い伝えがある黒猫ですがペットとして人気があります。代表的な黒猫の血統といえばアメリカで生まれた「ボンベイ」という品種です。
「小さな黒豹」ともいわれ、ボンベイという名前は黒豹が生息するインドのボンベイに由来しています。他の血統の場合は黒以外の毛色もいますが、ボンベイは黒一色でその毛並みはシルクに近い肌触りと言われています。
有名人と黒猫のツーショット
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黒猫を身につける
エジプト
古代エジプトではバステト神は家の守護者という役割から多産のシンボルとされていました。そのため出産を控えた妊婦はバステト神が子猫に乳を与えている小さなブロンズ像を持ち歩いたといいます。
「彫られた子猫と同じ数の子供が授かれますように」という願いが込められていたそうです。
ベルギー
ベルギーのイーペルという街では3年に1度、5月の第2日曜日に「猫祭り」が催されます。
このお祭りは中世に由来します。魔女狩りが活発化していた当時、街の人たちは魔女と疑われないよう可愛がっていた猫を塔の上から投げ落としたのだといいます。猫祭りはその悲しい過去と猫を悼む行事として始められました。
もちろん今では猫を投げ落としたりしません。代わりに黒猫のぬいぐるみを鐘楼から投げ落とすそうです。そのぬいぐるみをキャッチした人には幸運が訪れるといわれており、今では猫好きが集まるにぎやかなお祭りになっています。
イギリス
黒猫が幸運を運んでくるということで、イギリスでは結婚した花嫁に黒猫を贈る風習があったそうです。