仮想通貨の今後の動向が知りたくて18年前のITバブル本を読んだらほとんど状況が一緒で震える

2017/09/13


ビットコインの価格がものすごく上がっている。

去年の年末ぐらいにたまたまビットコインを買った。今年に入ってみるみる値段が上がり、ささやかながら含み益がある状態だ。今利益を確定させたらゆっくり国内旅行できるぐらいのお金が手に入るだろう。ちなみに僕は投資はおろか、暗号通貨もまったく詳しくない。投資で利益がでている経験なんて生まれて初めてで、正直、浮かれている。

そうなると気になってくるのは「ビットコインはこれからどうなるのだろう?」ということだ。

ビットコインは今バブルの状態だという意見をネット上でいくつか目にした。確かにそうなんだろう。なにせ去年の今頃は1ビットコインあたり5~6万で買えたものが今では40万以上もしているのだから。

一方でまだまだ価格は上がっていくだろうという意見も少なくない。暗号通貨の基幹技術となっている「ブロックチェーン」という技術は僕らの生活を変えるくらいのインパクトがあるという。

その影響力の大きさはインターネット並らしい。

インターネットの技術を基にしたウェブや電子メールによって僕らの情報のやり取りは一変した。今ではインターネットがない生活を想像することも難しくなっている。
ブロックチェーンはインターネットの時と同じく、僕らの生活の中にあるさまざまな契約行為を一変する可能性を秘めているという。契約というと堅苦しく聞こえるが、例えば物の売買に代表される所有の移転だけでなく、部屋の賃貸みたいな権利の貸し借り、頼んだり頼まれたりというような仕事にまつわることだ。ブロックチェーンの技術が確立されれば契約にともなう面倒な手続きが自動化でき、世界中の誰とでも瞬時かつ効率よく契約を結べるようになる。
だから暗号通貨の評価はまだまだ序の口で、これからますます需要が高まっていくだろうというわけだ。

どちらの言い分も正しい気がする。

そんなさまざまな意見の中で特に興味を持ったのが伊藤穣一さんのインタビューだった。

ベンチャーキャピタリストであり、日本におけるインターネットの発展に大きくかかわってきた伊藤さんには、今のブロックチェーンを取り巻く状況がインターネットの黎明期と似ているように見えるらしい。

伊藤さんはブロックチェーンについてこう語る。

「ブロックチェーンはベンチャーの投資が増えてフィンテックバブルになっていると思う。数字的に見るとインターネットの1997年とかネットスケープ以降のインターネットの伸びになっていて、ただインフラとしてはまだインターネットの規格が決まってない、プロバイダーがない、シスコがいないぐらいの足回りなの。キャプテンとかニフティーとかができてた頃で似たようなパターンなんだよ」

インターネット・バブル

90年代後半のインターネットをとりまく状況をもっと知りたい。そう思ってネットの記事を調べていたら、おもしろい本を見つけた。本のタイトルは「インターネット・バブル」という。

1990年代末期から2000年代初期に起きたインターネット関連の企業への過剰投資、いわゆる「ITバブル」ついて書かれている。近所の図書館にあったので借りてきた。

通常、この手の本は事後になってから「こうなることはとわかっていた」とか「こうゆう事態になると予想していた」という感じのものが多い。しかし本書が書かれたのは1999年。ITバブルが崩壊する2001年より前だというのが興味深い。

著者はもともとハイテク関係の雑誌の編集も務めていた経歴の持ち主。本書中にはビル・ゲイツやジェフ・ベソスなどのインターネット関連企業のトップ、そしてシリコンバレーの著名なベンチャーキャピタリストまで、いわゆるITバブルの真っただ中にいたキーパーソン達のコメントがちりばめられている。この本はITバブルの渦中にいる当事者たちの生の声が記録されているのだ。

読み始めてすぐに「これは本当に20年ちかく前に書かれた本なのか」と驚いた。あまりにも今の暗号通貨やICOを取り巻く状況に似ている。ちなみにICOとは暗号通貨関連企業や団体が資金調達のために独自のトークンやコインを発行する手法のことで、企業の新規上場(IPO)に似たようなものだ。

一部引用するとこんな感じだ。

「企業を構築するのは大変な仕事だ」という。「現実の企業を育てていくのに必要な時間を10年から1年に短縮する方法など誰も見つけてはいない。それなのに、なぜ最近は設立から10年どころか1年しかたっていないような企業が株式を公開するのか。それは我々が実際に企業を育てていこうとする努力をやめてしまったからだ。その代わりに株式を作り上げるために努力する。その方がかなり手早くできるからね。新規公開に向けてチームを作り、投資家に訴える物語をひねり出し、あっというまに金持ちになる。」
p24(序章-ネットバブルのマネーゲーム)
「大規模なブームによって資金を獲得し、大きな革新をもたらした産業の例は過去にたくさん見られる」と彼は言う。「私たちは、何か新しく、これまでとは違うものに対する投機が好きだ。それは、私たちの遺伝子に組み込まれた性向である。運河であれ、鉄道であれ、あるいは自動車やコンピューター、あるいはインターネットなど、すばらしい新テクノロジーが生まれると、誰もがその動きに一枚噛みたくなる。起業家の活躍には、投機的な行動がつきものなのだ」
p32(1章-インターネット熱狂時代)
株式公開したPCメーカー、ディスクドライブ・メーカーの数と、ここ数年に市場に登場したインターネット企業の数を比べてみるといい。ディスクドライブメーカーのうち、今も現存している企業が何社ある?せいぜい1割だろう。だとすれば、株式公開したインターネット企業のうち、長期的に残れるのもわずか10%程度になると言えはしないか
p104(2章-「カウボーイ」のようなベンチャー・キャピタル)
ほとんどのバイオテクノロジー企業が製品開発に書ける時間の長さを考えれば、こうした企業のIPOは、一般投資家の目から見れば利益の上がる投資というよりは金融市場での「イベント」的なものだろう。IPOの際に投資家たちが買うのは単なるコンセプトであって、何か形のあるものではない。
p211(5章-バイオテクノロジー・バブル)
「今、人々に私がアドバイスを与えるとしたら、一番大切なのは『慌てるな』ということだ。インターネット銘柄を買うのに焦る必要は少しもない」と、マクナミーはいう「実際には、インターネット銘柄に対するエクスポージャーを減らすべきだ。次の再編の波が訪れ、業界のシフトがもう一度起きてから、改めてこの産業に対する期待を考え直すべきだ」
p323(9章-加熱した市場環境での投資)

これから淘汰がはじまる

本書によると現在までにテクノロジー投機ブームは3度あったという。最初がパーソナルコンピューター、続いてネットワーク機器とソフトウェア、そしてインターネット。暗号通貨は4度目ということになる。

本の巻末には1999年6月時点で時価総額が1億ドルを超えているインターネット関連企業133社のリストが載ってた。

正直、聞いたこともない名前ばかりだった。知っていたのはアマゾン・ドット・コムをふくめて数社のみ。しかもそのうちのほとんどが今はなくなっていた。

数百種類にも及ぶ暗号通貨も毎日のように発表のあるICOプロジェクトも、きっとこの時と同じような淘汰が到来するだろう。それが今日なのか数年先なのかはわからない。基幹技術となるブロックチェーンはますます発展していくことは間違いなさそうだが、その発展がこれらの暗号通貨やICOプロジェクトの存続を保証するものではないことを心にとどめておくべきだ。なにせ先の133社のリストにはグーグルもフェイスブックも入っていない。このときグーグルはまだ創業1年目だし、フェイスブックに至っては存在すらしていなかったのだから。

***

本を読み終わってもまだなお、ビットコインを売ろうか持ち続けようか迷っている。もっと上がるかもという下心はもちろんだが、お祭りみたいな雰囲気から離れていくのがもったいないという気もしている。

ふと本の見返しを見ると、当時の貸出履歴が載っていた。

履歴は平成12年(2000年)5月から12月まで残っていた。ITバブルの崩壊秒読みといった時期だ。この本を借りた人達の中にもITバブルの恩恵を受けていた人がいたかもしれない。その人はちゃんと崩壊の衝撃を回避できたのだろうか。


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