ビンテージとかレトロとか


陶芸をやっている友達がいる。

けっこう本格的にやっていて、半年ぐらい前から陶芸の仲間と一緒に工房用の家を借りたそうだ。

物件は70年以上前の古い木造の建物。

かなり傷みがあるけど、代わりに破格で貸してくれたという。

少しづつ手直しをしているというので、遊びがてらに手伝いに行ってきた。

IMG_4807

実際見てみたら本当におんぼろで、傷んでいないところを探す方が難しいくらいだった。

が、さすが創作活動をやってるだけに手先が器用だ。手を入れた部分はしっかり直っていて、しかも見栄えがいい。こうゆうセンスをもって生まれてきたかったよ。

センスには自信ないが僕も日曜大工は嫌いじゃないので、トイレの扉や押入れの棚を直したらとても喜んでくれた。

建物がそれなりに使えるようになるまでにはまだまだ手間がかかりそうだけど、ずっと使われてなかったものが姿を変えて再び使われるようになっていく様は見ていて楽しかった。

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一方で古いものを使い続ける限界を感じたのも事実だ。

工房ならまだいい。

これが住まいとしてならだいぶ使い勝手が悪そうだった。

廊下、天井、間口…何から何まで狭い。

半世紀以上前の家というのはこれ程までにサイズ感が違うんだ。

暮らしていたのは同じ日本人なのに。

先日DVDで観た『東京物語』という映画でも同じようなことを思った。

全編にわたって人と人との距離が近い。

6畳間にいつも3人くらい居て、文字通りみんな鼻と鼻を突き合わせてしゃべってる。(さらに窓からとつぜん近所の人が話しかけてきたりもする)

公開当時は当たり前の光景だったんだろうけど、今観ると違和感だらけで、まるでどっか別の国の家みたいだ。

僕ら日本人の生活感覚が数十年でまったく変わってるんだと、いまさらながら気がついた。

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もう一つ思い出したことがあった。

東京の丸ノ内にある『三菱一号館』というレンガ造りの建物がある。

Mitsubishi_Ichigokan_Museum

今は美術館になっているが、元々は明治時代に建てられた日本で最初のオフィスビルだった。

この建物は半世紀ほど前に取り壊されたのだけど、2009年に復元された。

つまり今の三菱一号館は元々の建物ではなく、年代物風の外観で躯体や設備は現代の建築技術で建てられた「レトロな建物」というわけだ。

そして現在の三菱一号館が立つ前には『丸ノ内八重洲ビルヂング』という、それこそシブくて味のあるビンテージビルが建っていた。

Yaesu_building

丸ノ内八重洲ビルの取り壊しが発表され新たに三菱一号館を建てる計画を知った時、僕にはとても違和感があった。

「年季の入った建物を取り壊して新たにレトロ調の建物を建てるって無茶苦茶じゃないか」と。

でも今ならすごくわかる。悔しいけど。

今の三菱一号館はかっこいいし中は明るくて快適だ。それに比べれば確かに丸ノ内八重洲ビルヂングは重々しく窮屈そうに感じた。

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建物に限らず、靴や車などのデザインについて、多くの人は古い時代のものが好きだ。現にいろんなものが「復刻」している。

でも機能や使い心地に関していえば、できるだけ最新がいいというのが本音じゃないだろうか。

僕はそうだ。

いくら古いものには古いなりの使い勝手があるということに共感はできても、正直なところではやっぱり新しくて便利な方がいいなと思ってしまう。

とはいうものの「みんなレトロにすればいいんだ」と言い切るのも何か釈然としない。

何となくレトロに対する後ろめたさもある。

だから尚のこと古いものを古いまま使い続けている人を見るとある種の尊敬や憧れを感じる。

ホントお前はどっちなんだよと、自分につっこみたくなる。

そういえば友達はその辺どう思ってるんだろう?

やっぱりセンスなのかなあ。


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