ビール一気飲みの元祖はあの人? ビールの歴史が面白い『ビール世界史紀行』

2016/02/19


奥深いビールの世界

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最近ビールを飲み比べにハマってます。

普段飲まないようなビールも飲んでみることで、あらためて自分の好みが何となくわかるようになってきました。僕はキレがある辛口より、少し甘みがあるマイルドな口当たりの方が好きみたいです。

同時にネットでビールの豆知識を見ていたところ、一冊の面白い本を見つけました。ビールの歴史や知識を記した『ビール世界史紀行』です。

雑学好きにはたまらない一冊でした。

ビールには「ラガー」と「エール」がある

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たとえば日本のビールのルーツ。
ビールに種類があるって知ってますか?僕は今まで知りませんでした。

ざっくり分けると「ラガー」と「エール」の2種類あるそうです。

ラガー・ビール、いまでこそ世界中のどこでも造られ、世界中で最も多く飲まれているビールですが、ビールの歴史からみると 、実は新規参入の新式ビールなのです。

ラガー・ビールがドイツのバイエルン州 (州都はミュンヘン )で産声を上げたのは、ほんの500年前の15世紀のことです。

それとは異なるビールに、英国生まれのエールがあります 。英国に発祥し発展して2000年あまりの歴史があります 。エールはビールの原点であり、われわれがいま飲んでいるビールの源流であり、お手本といってもよいものですが、そのことは一般にはあまり知られておりません。

いま日本で作られているビールのほとんどがドイツ式のラガー。一方で最近話題の「よなよなエール」はイギリス式です。

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日本のビールのルーツはイギリスから

今でこそラガーの方が一般的ですが、ビールが日本に入ってきた当初はエールが飲まれていたようです。

明治4(1871)年 、横浜を出航し、米欧12カ国を20カ月かけて歴訪した「岩倉使節団」の主たる調査研究の対象がイギリスであったことを、彼らの報告書 『米欧回覧実記』が物語っています。

明治7(1874)年発行の資料に、ときの日本政府が招聘した「お雇い外国人教師の国籍別一覧があります。総計で508名の外国人教師のうち半数以上がイギリス人でした。とくに、技術導入のための官庁、「工部省 」には230名の外国人教師が雇われ、うち8割がイギリス人でした。

そんなわけで、幕末から明治の初めにかけて、日本で飲まれていたビールは英国製のエールでした。

産業革命のあった当時のイギリスは「世界の中心」といわれてました。「手本にするならイギリス!」というのが当前だったんでしょうね。

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でも全然売れなかった。「苦すぎる」などと言われ、エールの味が受け入れられなかったようです。

ビール一気飲みの元祖?

日本のビールがラガーに変わっていった経緯は味や醸造技術の進歩という理由もありますが、もっと別の要因も大きく関係していたようです。

世界情勢が変化してイギリスの勢力が次第に落ち始め、代わりにドイツが台頭してきます。

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そこで日本の官僚や学者がどんどんドイツへ留学しました。そうやってドイツでいろいろ学んできた人達が、日本に帰ってきてラガーを作り始めたというんです。

ちなみに軍人の乃木希典もドイツへ留学した一人だったそうなんですけど、著者は「この人がビールの一気飲みを日本に流行らせたんじゃないか」と書いています。

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ドイツ留学から帰った乃木はかつての豪快・豪遊乃木が影をひそめて、謹厳実直な軍人、新生乃木に変身します。

それほどにドイツ留学は乃木に影響を与えたのでした。そして、乃木は大のドイツ贔屓となります。
というよりも、ドイツかぶれといったほうが当たっています。

乃木の膝まで覆う長靴と真っ直ぐなサ ーベルはともにプロシア陸軍のそれでしたし、寝るとき以外は軍服を脱がなくなったのもプロシア陸軍仕込みでした。

しかし、乃木のドイツかぶれの真骨頂は、乃木が盛んにやったプロシア陸軍流のビールの一気飲みに尽きるでしょう。

この一気飲み、相当すごかったみたいですよ。

将校をテーブルの前に一列に立たせてビールを注がせ、「ビール飲め!」という号令をかけて一斉に一気飲みをさせる。飲み終わったらすぐに「ビール注げ!」の号令…。これを倒れるまで繰り返させたそうです。壮絶すぎます。

というように、当時はとにかくドイツに習えという風潮があったようで、これもラガーが広まった理由の一つといわれています。

「製品や規格の普及は品質だけで決まるものではない」と聞きますが、確かにそうなのかもしれませんね。

ビールを通して歴史を知る

当初はビールのことがざっくりわかればいいなと思って買った本ですが、何より歴史が面白い。

世界史はスケールが大きすぎていまいち頭に入りにくいのですが、「ビール」という焦点があるだけでぐっと身近に感じられます。

著者はまえがきで「酒にかかわる理屈を聞く前に飲んで見ることのほうが、酒そのものを新鮮な感性で味わうことができる」と説いているのですが、たしかに実際にイギリスやドイツに行ってビールを飲んでみたくなりました。

15章に分かれていている本書、日本のルーツはそのうちのまだ1章です。かなり読み応えがあります。ちなみに僕はキンドルで買いました。

大学の講義をまとめたものなので教科書っぽいところもありますがとても読みやすい文章なので、ビールのことを気軽に知りたい人にはおすすめです。


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